交通事故での脊髄損傷
脊髄は脳からの命令を身体に伝え、触覚や痛覚などの情報を脳に伝える重要な役割があります。脊髄はとても柔らかく、背骨によって守られています。
脊髄を含む中枢神経系は末梢神経と異なり、一度損傷すると修復や再生されること無く、回復は期待できません。
不全損傷であっても、機能の回復が期待できるのは、受傷後約3ヵ月までで、それ以降は、目立った回復はないでしょう。
受傷原因としては、交通事故が一番多く、全体の約4割を占めています。
脊髄を損傷するとどうなるの?
脊髄の損傷は、損傷した部位ごとに感覚機能、運動機能、自律神経系、排泄機能などの様々な障害が生じ、完全に脊髄が断裂している場合は、その部位以下の身体の機能は完全に麻痺します。
脊髄の断裂が不完全で脊髄神経が部分的に傷ついた状態の場合、一部の機能が残る不完全麻痺となります。 このように障害の程度は、損傷部位や損傷の程度によって異なってきます。
交通事故での脊髄損傷と後遺障害
交通事故により脊髄損傷となった場合、後遺障害の認定基準は以下の要素で判断されます。
等級認定を得るためには、脊髄損傷によって、どの範囲にどの程度の麻痺が生じているのかを医学的に証明することが重要です。これらと一緒に、どのような周囲の介護が必要であるかも考慮されます。
- ・麻痺の範囲【四肢麻痺・片麻痺・対麻痺・単麻痺(注)】
- ・麻痺の程度【高度・中等度・軽度】
- ・CTやMRIの画像所見による証拠
- ・各種の神経症状テストの検査結果
- ・介護の要否とその程度
- ・適切な記載のある後遺障害診断書
- (注)
- ・四肢麻痺とは、両側の四肢の麻痺をいいます。
- ・片麻痺とは、一側上下肢の麻痺をいいます。
- ・対麻痺とは、両下肢又は、両上肢の麻痺をいいます。
- ・単麻痺とは、上肢又は、下肢の一肢のみの麻痺をいいます。
脊髄損傷の後遺障害等級認定基準
等級 | 認定基準 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 1.高度の四肢麻痺 2.高度の対麻痺 3.中等度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する 4.中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する (例)第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱傷害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形等が認められるもの。 |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 1.中等度の四肢麻痺 2.軽度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する 3.中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する (例)第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中等度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形が認められるもの。 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 1.軽度の四肢麻痺 2.中等度の対麻痺 (例)第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の中等度の単麻痺が生じたために、杖又は硬性装具なしには階段をのぼることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの。 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1.軽度の対麻痺 2.一下肢に高度の単麻痺 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1.一下肢に中等度の単麻痺 (例)第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度の遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの。 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 1.一下肢に軽度の単麻痺 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 1.運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺 (例)軽微な筋緊張の亢進(こうしん)が認められるもの。運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの。 |
交通事故の脊髄損傷は、事故直後の画像所見や医師が被害者を確認した状況が極めて重視されます。交通事故直後に、被害者の方は交通事故専門の弁護士に連絡してください。被害者の方は治療に専念していただき、弁護士と交通事故専門スタッフが全力でサポートいたします。山本直道法律事務所にお気軽にご連絡ください!